私たちジャストは、調査・診断業務を通して
構造物の安全確保とストック型社会の実現をめざします。

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気付き

恥ずかしながら、昨年体調不良で倒れ人生初めての入院を経験した。
自分の身に降りかかって初めて分かることもある。 

日本では、ハートビル法を経て、平成18年(2006年)に「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」、通称「バリアフリー新法」が施行されている。高齢者、障害者等の移動等の円滑化を通じて、誰もが暮らしやすいまちづくりを進めていくことが目的である。

病院内をストレッチャーで運ばれながら、「エレベーターの段差が、エキスパンションジョイントの段差が、ドアの沓擦りの段差が病身の体に苦痛をもたらすのだな」と考えていた。元気になって見れば、たかが数ミリの段差である。
トイレに入れば手摺が片側にしかない。点滴を付けていたらトイレのドアが閉まらない。
設計者は何を思って計画したのだろうか?

バリアフリーと言うと、物理的・建築的なイメージが多いかもしれない。心理的、制度的、情報のバリアも存在する。点滴をしている私に、病院の方が「着替え置いときます」とだけ言って出て行ってしまった。腕に点滴を付けたままどうやって一人で着替えるのか、途方に暮れるしかない。これは相手の無理解と伝達が上手くいかない、心理的および情報のバリアである。
 
自分がどうなるか不安を抱きつつも、バリアフリー・ユニバーサルデザインについて考えていたのは職業病なのだろう。

退院してから気づくこともある。エスカレーターに乗ると首都圏では右側を歩いて進む人のために空けておくことが多い。
もし、あなたの左手が骨折していたとする。エスカレーターの右側に立ち、右手で手すりを持つ勇気があるだろうか?
健康なときには困らないことである。
元気な人達がエスカレーターを使い、小心者で体調不良の私は手摺を求めて階段を使うことになる。

考え出すときりがない。

世間では2020年東京オリンピックに向けて「おもてなし」と言い、日本の素晴らしさをアピールしている。国土交通省の政策では、2020年の訪日外国人旅行者4000万人を目標にしているそうだ。電車に乗れば英語のアナウンスも増えた。英語のアナウンス、英語圏以外の人も一生懸命聞き取ろうとしていることを考えているだろうか? 乗り換え専用の改札口に、「乗り換え専用」と日本語で書いてあって、外国人旅行者は迷わないのだろうか?自分が困ることがなければ気が付かないのだろう。

私は建築業界の末端に身を置かせて頂いている。
社内では破壊・非破壊を組み合わせて建物の調査をする部門におり、建築業界の方でも馴染みの少ない機器を扱っている。
わが身を振り返れば、「相手も分かっているだろう、伝わっているだろう」で話を進めていることも少なくない。

自分がバリアとならないように、今回の経験を生かして、どんな人でも安心して暮らせる建物を提供できる手伝いをしたいと思う。

調査診断第一部
青木 孝二