構造物の火災後調査
日本では年間約3万件の火災事故が発生しており、うち6割が構造物火災とされています。しかし鉄筋コンクリート造や鉄骨造といった耐火性の高い構造物の場 合、出火しても大規模な火災には発展せず、焼失を免れるケースが大半です。そこで残存した構造物を安全に再使用するために、火災後の構造安全性や耐久性を 正確に把握する必要があります。
こうした火災後調査に関する指針としては、社団法人日本建築学会から「建物の火害診断および補修・補強方法指針(案)・同解説」(以下「火害診断指針」)が出版されています。
私たちジャストでは、この指針に則ったうえで、独自の非破壊検査手法を加え、より精度の高い調査を行っています。
火害の影響
構造物が火災を受けると、構造物表面への煤の付着や異臭などのほか、受熱温度に応じて躯体の材料特性が変化し、構造安全性、耐久性および使用性などに影響を及ぼします。
「火害診断指針」によると、火熱を受けた場合の材料特性の変化は、以下のとおりです。
(1)コンクリート
- 圧縮強度は、受熱温度が200℃を超えると低下しはじめ、500℃に達すると常温時の1/2程度まで低下する。
- 受熱温度が300℃以下の場合には、冷却後の圧縮強度が常温時の70%以上残存している。
- 低強度のコンクリートについては、受熱温度が500℃以下であれば、残存圧縮強度が時間とともに自然回復する。ただし、高強度コンクリートの場合には、強度回復が進まない場合もある。
- ヤング係数の低下は、圧縮強度の低下より若干大きくなる。
- 鉄筋との付着強度は、受熱温度が500℃で1/4程度となるが、300℃以下の場合には受熱前の70%以上残存している。
(2)鉄筋およびPC鋼棒
- 通常の異形鉄筋では、受熱温度が500〜600℃程度であれば、冷却後の残存強度は受熱前と同等であるが、それ以上になると、残存強度が低下する。
- PC鋼棒では、受熱温度が300〜400℃程度を超えると、強度は回復しない。
(3)鉄骨
- 一般鋼材では、受熱温度が500〜600℃程度であれば、冷却後の残存強度は回復する。また、変態点温度である720℃を超えると、その後の冷却過程により強度が高いが延性の少ない、または延性があるが強度が低い特性となる。
- PC鋼棒や高強度鋼などの調質鋼については、受熱温度が300~400℃程度を超えると、強度は回復しない。
- 高力ボルトの加熱後の残存軸力は、受熱温度が300〜400℃程度を超えると低下する。



調査方法
(1)鉄筋コンクリート造
「火害診断指針」によると、調査は、建物の概要や火災の情報収集などの「予備調査」→目視による損傷の状況と受熱温度の推定のための「一次調査」→火害の程度を詳細に把握するための力学的試験や材料分析などの「二次調査」の順に実施するとされています。
しかし実際の調査では、その後の対策を緊急に検討・実施する必要があるため、火災による損傷の程度と、躯体の受熱温度の推定が主目的となり、一次調査と二 次調査を同時に進めることも多く、目視による仕上げ材や躯体の状況の調査およびコンクリート表面の状況(受熱温度により、煤の付着状況やコンクリートの色 が変化する)の調査のほか、コアを採取し中性化試験および強度試験などを実施します。
そしてこれらの結果をもとに、被災度を判定し、補修、補強の検討を行うことになります。
(2)鉄骨造
鉄骨造の構造物も、調査は「予備調査」→「一次調査」→「二次調査」の順に実施するとされていますが、実際には鉄筋コンクリート造と同様、火災による損傷の程度と、前述の躯体の受熱温度の推定が主目的となり、一次調査と二次調査が同時に進められます。
鉄骨造の場合は、仕上げ材の状況や鉄骨表面の状況(煤の付着状況や塗装の変状などにより受熱温度を推定する)の調査のほか、残留変形の計測、部材や高力ボルトの機械的性質の確認と、火熱の影響により溶接部に亀裂の発生が懸念されるため超音波試験を行います。 このうち部材や高力ボルトの機械的性質の確認については、「火害診断指針」では、部材を切り出して引張試験を行うこととされています。しかしジャストでは、持ち前の非破壊技術を適用し、部材を傷付けることなく現場で鋼材の引張強度推定とボルト軸力測定を調査することも可能です。
※ボルト軸力測定の詳細を開く


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