上を向いて歩こう
老朽化したビルの外装材や看板が落下したり、高架橋からコンクリート片が剥落したりする事故が相次いで起きています。
現在、緊急点検が進められているようですが、安全確認には時間がかかると思います。なぜならば、高い場所における点検には手間がかかるからです。とくに仮設足場や高所作業車を用いての点検には、多くの関係者との調整が必要です。人通りや交通量の多いところ、直下に店舗や駐車場などがあるところでは、日程や時間が制限され、思い通りにいかないこともままあります。
重力に逆らって物を設置すると、老朽化による落下のリスクが発生します。
高いところの点検やメンテナンスを頻繁に行なうことは難しいですが、暴風雨や地震などの自然条件が厳しい日本ではこうした備えが大切です。今後、建物や公共インフラの老朽化がさらにすすむ我が国では頭のいたい問題です。
「安心、安全」は人任せにするのではなくて、自らも率先して確保しなければならないと思います。災害時対応や防災を考えるうえで「公助、共助、自助」という言葉を聞いたことはありませんか。
・公助とは、行政やインフラ企業による復旧、防災対策のこと
・共助とは、近隣コミュニティーが互いに助け合って地域を守ること、備えること
・自助とは、自らの命は自らが守ること、備えること
頭上からの落下物に対しては、「公助」(行政や建築主による落下防止対策)だけに期待するのではなく、「自助」によってリスクをさらに減らせるのではないでしょうか。
上を向いて歩こう。
ビル街や繁華街、高架橋の下などを歩く時は、頭上に「重力に逆らっているもの」がないか注意するに越したことはないと思います。外壁に生じたひび割れや古びた看板などを見つけたら、次からはその直下は歩かないようにすることも自衛策のひとつです。上ばかり見ていると人にぶつかったりするため、前に注意することも忘れないようにしなければいけませんが、上を向くと普段目にしない景色が目に入り、気分転換にもなると思います。少なくとも、スマホとにらめっこしながら歩くよりいいのでありませんか。
調査診断第二部 部長 森田 修平